2016年07月23日

TERA




TERA











































                

                       中学生のノボルと    ミカコは仲の良いクラスメイトであったが、


                       3年生の夏にミカコが国連軍選抜メンバーに抜擢、


                       二人は宇宙と地球と離ればなれとなってしまう。。。。







                       。。。。。   私達は宇宙と地上に引き裂かれる、恋人  。。。。







                       携帯電話のメールで連絡を取り合う二人だったが、



                       ミカコが乗る宇宙船が地球を離れるにつれ、       



                      メールがとどくまで      どんどん時間がかかるようになり



                       その時間のズレは決定的なものへとなっていく…。
   







                       。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。





                



電柱のむこうに広がる空、流れる雲、アスファルトの匂いが心地よかった。
朱と紺で塗り上げられた世界を2人が乗った自転車はゆっくりと駆けて行く。
自転車を、ノボルを、そして自分を繰り返し横切る長い影。
キラキラと輝く自転車のスポーク、ノボルの肩越しに流れる風。
電線さえも細く輝く夕日。
そんな全てのモノが襟足をくすぐり、次々と後ろへ流れて行く。



「ねぇ、見て!、空!」



『トレーサーだ』        リシテア艦載機の訓練飛行だろう。




遠くへ響くような音を引き連れ、幾筋もの飛行機雲が西へ伸びて行く。
向こうに見える夕立雲の影、細く伸びる飛行機雲、照らし出す夕日。
いつもの街並み、団地や公園、少しくたびれたガードレールや街路樹、みんな同じ色に染まっている。




                       「綺麗だね」


                        自転車を停め、空と街を見る2人。


                        やんだ雨を喜ぶような蝉の声が聞こえて来る。



                        「うん」

                       僕たちの世界って、   僕たちの街って、こんな風にできていたんだ。


                       ノボルとミカコは初めて気がついたかのように、自分達の街を、その心地好さを、ただ見つめていた。


                       ノボルの右耳にそっと頬を寄せ、ミカコは小声で言った。


                       「ねぇ、ノボルくん・・・私ね、あれに乗るんだ 、、、」







                      国連からの   宇宙への抜擢 。。。    原則、選抜された者に拒否権は無い。







                      地球と  はるか彼方  。。。   ふたりは  ひきさかれる 。






                      
                      。。。。。。。。。。。  旅立った ミカコ










                    《いよいよ木星を出発。   リシテア号はこのあと、冥王星のずうっと先までいくよ。




                    メールがとどくまでだんだん時間がかかるようになるけど、

                    いちばんはじっこのオールトの雲からだって    半年ぐらいのもんだからね。


                    20世紀のエアメイルみたいなものだよ       うん、大丈夫。》







                   ノボルは、片手で持った携帯を見つめながら呟いた。

                    「なにが・・・大丈夫なんだ」



                    あの日と同じ夏。。。。       ノボルの横にミカコはいない。






             。。。。。。。。。。。。。。。。。。。







       「ただ、ミカコからのメールを待つだけの自分になってしまう」

        今の自分は何をすればいいのだろう。
       何をする事ができるのだろう。
       ミカコのために。

        夏の空に、高く高く昇る雲だけがあの日と同じ色をしていた。







                 このメールがノボルくんに届くまで、    1年、        シリウスからは片道8年だよ。

                打ち終えたメールを送信して確認する。



                 《メール到着まであと:1年・16日・12時間》



                急に届かなくなるメール、      1年後にやっと    1通届く。



                 顔も、声も、見えない、    聞こえない、私。




                ノボルくん・・・    私の事、忘れちゃうかな。










1年前、あの夕立の日がもう随分と遠い日のように感じられる。

むせ返る暑さ、かじかむ寒さ、前髪を揺らす風、奏でられる雨垂れの音。



ここには何ひとつなかった。










《リシテア号はこれからね、長距離のワープに入るの。

 目的地は8.6光年先のシリウス。


 このメールが着く頃には私はもうシリウスにいるよ。





 お互いのメールが届くまで、      これからは     8年7ヶ月かかることになっちゃう 、、、


 ごめんね。





 ねえ、『私達は宇宙と地上に引き裂かれる、恋人みたいだね 』







ノボルは小声で読みながら、目頭が熱くなった。
今度は必死に涙をこらえてみせた。
自分の弱さで泣くことは、ミカコを悲しんで泣くことは、あの夜で終わりにした。




僕とミカコとの時間はどんどんズレて行く。
だからミカコの為、自分の為に目標を立てた。
もっともっと、心を強くすること。
開かない扉をいつまでも叩いたりしないこと。
僕は自分の時間を生きること。

俺は、1人でも大人になること。




、、、、、、、、、、、、、、、





8.6光年先のシリウス。    ここで  15歳の  ミカコが  メールを送り 届くのは


24歳になった   ノボル  。。。。









ただ好きだから、ミカコは涙で歪むキーを押した。

悲しいからじゃない、悔しいからじゃない、涙が流れるからじゃない。










《24歳になったノボルくん、こんにちは      私は 15歳のミカコだよ。


 ね、私はいまでもノボルくんのこと、   すごくすごくすきだよ》






《メール到着まで     あと:8年・224日・18時間》







8年なんて時間は想像も出来なかった。
あの世界との距離なんて意味を失っていた。
ただノボルくんにだけ。

愛しい物を抱きしめるように、自分の心を込めるように、携帯を胸に抱く。

「とどいて・・・」






                           


                       さて   。。。。 ふたりの  運命は  。。。。



















Posted by SideWalkTalk at 13:03│Comments(0)
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